おもちちゃん、ボトルネックって意味わかる??
ペットボトルを首からぶらさげるやつ??
ぶっぶーーーー
わかんないーーびえぇええええええええええ
泣いちゃった!!
今日は米澤穂信さんの力作「ボトルネック」のレビューと考察だよ。
米澤穂信さんと言えば、古典部シリーズがアニメ化されたことで一躍有名になった「氷菓」の作者さんなんだ。
初期はとくに青春ミステリーの作品が多くて、文体が読みやすいことから若い人にも人気のある作家さんなんだ。
その米澤穂信さんが大学時代からアイデアはありながらもずっと温め続けて28歳の時に完成させたのが「ボトルネック」だよ。
ボトルネックの意味
ボトルネックとは、全体の能力や成果に影響する問題となる要因のこと。
「これがネックなんだよなあ」、ある1つの問題のことをこういう風に言うことあるよね。
「ネック」というのは「ボトルネック」の略なんだ。
つまりはその「ボトルネック」がなければ物事が順調に進んだり、状態が良くなるということ。
じゃあこの小説の何が「ボトルネック」なんだろうか。
「ボトルネック」の簡単なあらすじ
2年前に事故で死んだ恋人ノゾミを弔うためにリョウは東尋坊に行く。
そこで母から、兄の訃報を知らせる電話があり家に帰ろうとした時、崖から転落してしまう。
目を覚ますとそこは東尋坊ではなく、リョウが住む金沢の浅野川のほとりだった。
自宅に戻ったリョウだったが、そこには存在するはずのないリョウの姉サキがいて、サキはここは自分の家だとリョウのことを不審がる。
2人は会話を進め、どうやらリョウは自分が生まれずに、逆に元いた世界では生まれてこなかった姉のサキがいる別世界にいるということが判明する。
サキとリョウは、リョウのいる世界とサキのいる世界の「間違いさがし」をすることに。
飛ばされた世界では、リョウのいる世界では死んでいる人が生きていたり、潰れた店が営業していたりという違いがあり、恋人ノゾミもこの世界では生きていた。
「ボトルネック」の感想と考察(ネタバレあり)
ここから先はネタバレがあるので知りたくない人はブラウザバックをするか、おもち君の別の記事を読んでね!!
自分が存在しないパラレルワールド
「ボトルネック」で唯一SF的な要素があるのが、パラレルワールドに飛ばされるという部分。
僕はよく、自分なんかいなければよかったのに、と思うことがある。
自分がいなければ人を傷つけることもなかったし、もしかしたら誰かが幸せになっていたかもしれない、と。
ただそういうことを考えるのは自意識過剰だとも思うし、人一人いてもいなくてもそんなに大きくは変わらないとも思う。
途中で死んだわけでもなく、最初から存在しないんだからなおさらね。
ただこの小説は、その自意識過剰かもしれないというある種のポジティブシンキングを見事に玉砕してくれる。
自分の代わりに生まれた姉のサキは明るく天真爛漫で、頭もきれるちょっとお節介なところがある女の子。
サキは「間違いさがし」をしようと、リョウの世界とサキの世界で違っていることを探し出すことにする。
そうして探しているうちに、リョウの世界では両親は不仲なのに対し、サキの世界の両親は2人で旅行に出かけるほどの仲良しであったり、リョウの世界ではなかった店(潰れた)が潰れていなかったり、探せば探すほどサキの世界のほうが物事が良い方向に行っていることがわかる。
しかもサキは自らの行動でそういう結果になったという自負があるんだ。
サキは興味本位とリョウを助けるつもりで「間違いさがし」をし始めたんだけど、すればするほどサキとリョウの違いが明らかになっていって、恋人の生死さえも違っていることからリョウは、「自分なんかいないほうがいい」と強く思うようになっていくんだ。
リョウの世界の話は、暗い出来事が多いんだけど物語のほとんどはパラレルワールドのサキの世界でのことを描いている。
サキとリョウの会話シーンも多く、サキの性格や口調から物語全体を見ればどちらかと言えば軽快でコメディ的な要素もある。
おそらくリョウも、最初のうちは「間違いさがし」をしていても、「まあ別にいいか」ぐらいの気持ちでいたんだけど、終盤で恋人ノゾミの生死について触れるあたりから自分の性格や存在そのものに対してより嫌悪感を抱くようになっていき、小説のタイトルへと繋がっていく。
「ボトルネック」のタイトルの意味
ここまで読んだ人はもう気づいてると思うけど「ボトルネック」なのは、主人公リョウのことなんだ。
自分がいることで世界が悪くなっている、そう感じたリョウは自分のことをボトルネックだと思うことになる。
ただ、この話に出てくるリョウとサキの世界の違いはサキから語られる武勇伝的なところがある。
事例によってはサキが関与はしているもののたまたまじゃない?ということもあるし、現段階では良いかもしれないが今後どうなるかはわからない。
それでもリョウは「自分からは何もしない性格」故に、行動をするサキを見て自分のせいで悪い方向に行ってしまったと思い込んでしまう。
物事が順調にいかなかったり、状況が悪くなるのは「ボトルネック」である自分が存在しているからなのだと感じるんだ。
何故パラレルワールドに飛ばされたのか
物事に全て理由があるとは限らないけど、小説では1つ1つの要素に何かしらの意味があると考える僕は、リョウがどうしてパラレルワールドに飛ばされたのかも考えてみた。
そもそも本当にパラレルワールドに飛ばされたのか、というとこなんだけどこれは予測であるし可能性でしかない。
もしパラレルワールドなのだとしたら、リョウにとって都合の悪いことばかり起きているのに少し不自然さを感じる。
こんなにも自分がいないことで好転する世界というのはちょっと出来すぎだと思うんだよね。
とすると、自分のいない世界というのは誰かによって意図的に創られた世界っていう見方のほうがしっくりくる。
冒頭では深く掘り下げられていないんだけど、リョウはすでに死のうとしていたんじゃないだろうか。いや、正確に言えば、死んでも別にいいと。
物語の途中で、川守っていう少年が「グリーンアイドモンスター」の話をリョウにする。
グリーンアイドモンスターは生きている人に毒を吹き込み死の世界に連れていこうとする妬みの怪物。
東尋坊にはグリーンアイドモンスターがいるから絶対に一人で行ってはならないと忠告してくれるんだ。
これはサキの世界での助言だけど、リョウの世界でのことでもある。
つまりグリーンアイドモンスターがリョウをこの世界へと誘ったのではないか。
じゃあ、グリーンアイドモンスターの正体は誰なのか。
先にも書いたように、リョウは物事に対して何もしないという生き方をしていた。
それに対しサキは自分から他人を巻き込むぐらい行動力のある子だ。
サキは行動し、世界を良くした。リョウは何もしなかったせいで世界が悪くなっていった。
リョウは自分がサキのようにしていればノゾミも死ななかったし、もしかすると兄までも助かっていたんじゃないかと思っていたんじゃないかな。
リョウの後悔がサキという人物を作り上げた、とすればこのパラレルワールドはリョウが作り出した夢のようなものなのかもしれない。
グリーンアイドモンスターはリョウ自身で、死んでしまった、いや、死ぬことができたノゾミや兄に対する嫉妬なのかもしれない。
もしかしたらリョウは東尋坊の崖から飛び降りて、意識不明の状態で自分がいないほうがよかったっていう気持ちを正当化するためにそんな夢を見たのかもしれない。
まとめ
「ボトルネック」は最初リョウの重々しい雰囲気からスタートして、サキの登場で一気にコメディタッチの読み物になる。
そして物語が進んでいくとそのコメディ的な部分が全部伏線になっていることに気づいて、一気に読者の心を突き落としてくる。
この構成がとっても素晴らしいと思うし、上げてから落とすっていう作者の策略にまんまとはめられたなと思ったんだ。
それからこの小説の舞台は金沢で、金沢大好きな僕にとっては嬉しいポイントだった。金沢住みの人だったらすごく親近感がわくかもしれないね。
最後に、「ボトルネック」の一番最後の部分は、リョウの母親からのメールの一文で締めくくられるんだけど、そこが僕が大好きな部分。
これから読む人は最後の一文を楽しみに読んでみてね!!
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