書籍考察・レビュー

小説「蛇にピアス」の感想。この小説が伝えたかったことは何なのか考察。

金原ひとみ「蛇にピアス」の感想
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おもちくん
おもちくん

おもちのくせにボディピアスをしているおもち君だよ!

おもちちゃん
おもちちゃん

おもち君のピアスの穴、向こう側が見えて怖いびえええええええええええ

おもちくん
おもちくん

ピアスをはずしてる時のほうが目立つんだよね・・・

おもち君の話はさておき、今日は金原ひとみさんの「蛇にピアス」のお話だよ。

僕自身に話がシンクロしすぎて感情移入しまくったんだよねえ。

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「蛇にピアス」について

第27回すばる文学賞を受賞、綿矢りささんの『蹴りたい背中』とともに、第130回芥川龍之介賞を受賞した作品。

生きている実感のない19歳のルイがスプリットタン(蛇のように2つに分かれた舌)にしていく過程や背中に刺青を入れるお話だよ。

過激な内容ながらも物語の純粋さや細部の描写の秀逸さから評価された作品なんだ。

2008年9月に吉高由里子主演で映画化されている。

キャッチコピーは「19歳、痛みだけがリアルなら 痛みすら、私の一部になればいい。」

作者 金原ひとみさんについて

1983(昭和58)年、東京出身の金原ひとみさんは『蛇にピアス』ですばる文学賞し翌年に芥川賞を受賞。

デビュー作が芥川賞を受賞し、同時受賞者の綿矢りささんは最年少受賞者ということで話題になった。(綿矢りささんと金原ひとみさんは同学年だけど綿矢さんのほうが半年誕生日が早いから金原ひとみさんは最年少受賞者にはならなかった)

『TRIP TRAP』で織田作之助賞、『マザーズ』でドゥマゴ文学賞を受賞して、若くして活躍している小説家さんなんだ。

さらに『アタラクシア』で渡辺淳一文学賞、『アンソーシャル ディスタンス』で谷崎潤一郎賞、『ミーツ・ザ・ワールド』で柴田錬三郎賞を受賞。

その他で有名な著書は「アッシュベイビー」

参考サイト:新潮社 金原ひとみ プロフィール

「蛇にピアス」の簡単なあらすじ

主人公のルイは恋人のアマのスプリットタンに憧れ、アマの行きつけの店の店主シバに舌ピアスをあけてもらう。

生きている実感のなかったルイは、ピアスを拡張していく痛みに取りつかれアマには内緒で背中に刺青をすることを決める。

ある日の夜、ルイが友達と歩いていると知らない男たちに絡まれる。

恋人のアマはそれに激昂し、男たちに暴力を振るい歯を2本奪う。

この事件で警察が動き始めたことを知ったルイはアマの容姿を変えたりしながら捕まることに不安を抱きながら生活する。

「蛇にピアス」の感想と個人的な話

僕は10代の頃初めて耳にピアスをあけてから、20歳になるまでには2Gのボディピアスをしていた。(ボールペンが通るぐらいの穴でピアスを外すと向こう側が見えるくらいの大きさ)

今は4Gの穴が1つだけあいてるよ。

そこまで大きな穴にするには少しずつ拡張していかなきゃいけないし、当然痛みも伴う。

オシャレとしてピアスをする、というよりは痛みの先にある成果を保有したかったと言ったほうが近い。そこがルイと僕が似てるなと思った部分なんだ。

(スプリットタンの画像載せるとグロいって言われそうだから我慢するね・・・)

話は少し変わるんだけど、自傷行為をする人の多くは、切る時の痛みと流れる血を見ることで生きている実感を得られるって言うんだ。

人間、生きている実感っていうのは当然あるものだけど、心が死んでしまっている時には生きている実感を得られずに、その実感を早く取り戻そうと自分を傷つける行為に走るということがあるんだと僕は自分の経験から学んだんだ。

(痛みを感じるとアドレナリンが出るからそれが気持ちい良いと勘違いしてしまうってよく言われてるよ)

痛いと感じる=生きている、という証明のようなもの。

この作品は、ピアスや刺青のファッション性じゃなくて、完成するまでの過程で感じる痛みを通して自分の存在を確認している、という内容。

普通の人には生きている実感がない状態ってなかなか想像できないと思うんだ。

健康な人だって生きてるって毎日実感しながら生きてるわけじゃないよね。

実感はしないけどそれをわざわざ気にしないというか、気にしなくても平気なんだよね。

自分の存在の認識が曖昧になったり、何で生きてるんだろうってところから本当に生きてるのかなって考えだしたり、自分が見ている世界がまるで別の次元の世界を見ているような感覚になったり、心が闇に侵されていくとそういう状態になったりするんだよね。

僕は医者じゃないから絶対そうだとは言わないけど、BPDの症状に結構当てはまると思ったよ。

人間って色んな人がいるけど、こういう生き方もあるんだなって思いながら読むといいかも。

今までの人生でそういう時があった人にはこの小説はすごく刺さる。

逆にそういう経験がない人は「蛇にピアス」を読んでもらうと、こういう人間の一面もあるんだっていうのが発見できるかもしれないね。

やっぱ芥川賞とっただけあってすごく人間の内側を深く描いているし、賞を獲った当時ってボディピアスとかスプリットタンって全然知られていない時だったから読んだ人は衝撃だっただろうな。

あと小説なのにちょっと痛い痛い!って思っちゃうぐらい描写が細かいし伝わってくるのがすごいところの1つだね。

映画「蛇にピアス」について

2008年9月に金原ひとみさん本人の意向を受けて蜷川幸雄監督による映画が公開された。

主演の吉高由里子の初主演映画なんだ。

他にも高良健吾、小栗旬、唐沢寿明、藤原竜也と豪華なキャストだ。

ストーリーは原作にかなり忠実なんだけど、やっぱり純文学の映画化って難しいと感じさせられた。

R15指定で、映像のインパクトが強すぎて肝心の主人公の心情がなかなか入ってこない気がしたんだよね。

原作を読んでない人が映画を観ると、一体何の映画だったんだと思うかもしれない。

小説からでも映画からでもいいけど、とりあえず映画を観るなら必ず原作を読んでほしいなと思う。

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まとめ

今でこそボディピアスや刺青はファッションの一部として理解されつつあるけど、この本が出版された約20年前は若者であっても偏見を抱く人も多い時代だった。

そんな中「蛇とピアス」は、人体改造にのめりこんでしまう若者の心の闇やマイノリティな人間の心理をストレートに描いたことで注目を浴びた作品だと言える。

難しい言葉や表現は使われていないのに人間の心理が細部まで表現されているのがすごいんだ。

是非読んでほしいな。

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