もち生(人生)の80%は病んでるおもちです。今日は冷静と情熱のあいだっていう本のことを紹介するよ。
「冷静と情熱のあいだ」を最初に読んだのは今から10年以上前。
人気作品とは知らず、同じタイトルの本が色違いで2冊置いてあったのでどういうことなのだろうと手にとったのがきっかけで本を購入したことを覚えている。
そういった人達がこの本を手にとる後押しになるように「冷静と情熱のあいだ」とはどういう本なのか紹介する。
冷静と情熱のあいだについて
男性視点の話の青い本(blu)、女性視点の赤い本(Rosso)の2冊で1作品になっている変わった形態の恋愛小説で1991年に出版された。
元々月刊誌に、江國香織さんが女性視点でのストーリーを書いて、次の月は辻仁成さんが男性視点で書くという風に交互連載されていたもので、本にする時に男性視点と女性視点の2冊になったのだ。
2001年に映画が公開。青の本(blu)の主人公阿形順正を竹野内豊、赤の本(Rosso)の主人公あおいをケリー・チャンが演じた。
撮影は日本、イタリアのフィレンツェ、ミラノで行われ、小説とは異なる部分もあるが原作の雰囲気を尊重した小説の実写化では数少ない成功例であると僕は思う。
あたいは女の子の赤の本がいい!買ってきて!
今すぐ買いにいきます!!(病)
あらすじ
かつて恋人同士であった順正とあおいの話。いつまでも忘れられないかつての恋人のことを想いながら生活する順正と、過去と決別するために生きているあおいの心情が巧みに描かれている。
離れて暮らす二人に、交際していた時に交わしたある約束の日が迫ってくる。
二人は約束を果たすのか、それとも・・・。
レビュー
タイトルの「冷静と情熱」とは言い換えると、「理性と本能」ということなのではないだろうか。
好きだという気持ちだけに従って恋愛をするというのは、情熱的であり本能的だ。結婚を考えて相手の経済力や結婚生活を見据えて相手を選ぶというのは冷静で理性的。
どちらが正しくてどちらが間違いということはないし、どちらを優先しているかというだけで人間は冷静と情熱=理性と本能の両方を持って生きている。
「冷静と情熱のあいだ」というのは、どちらかに偏りすぎないようにバランスを取りながら生きていく人間のありかたを表しているのではないだろうか。
順正はあおいのことが忘れられない、どこか弱々しく過去の恋愛を引きずるタイプの男性だ。あおいと別れてからのパートナーはあおいとは逆の天真爛漫なタイプで、過去を無理やり忘れようとしているように感じられた。
一方あおいは、理性的で頭の良いパートナーと生活していて、できるだけ感情を抑えて静かに生きていこうとしていることがわかる。
失恋した後って前の人とは違うタイプの人のこと選びがちよね
忘れたいとか同じ失敗をしたくないって思うもんね
作品の舞台であるミラノとフィレンツェの情景が行ったことのない人にも思い浮かべることができ、途中から異国の地という意識すらなくなり、まるでそこで自分も生活しているかのような錯覚に陥る。
こういう情景描写が強調せずとも印象に残るのは作家の技術で、何度読み返しても文章の美しさに心を奪われる。
物事が次々と起こるのではなく、二人の心理や感情を中心に描かれている、というのがベースにありその中で唯一時間を感じさせるのが、二人の交わした約束だ。
まだこの本を読んでいない人、どちらから読もうか迷っている人にbluとRosso、どちらを先に読むべきか聞かれたら、自分の性別と同じ方からと答えたい。
この作品は2冊読んで初めて完成するので両方読むべきなのだが、最初に読んだ方がメインで、次に読んだ方が番外編、というような位置づけになりがちだ。
それならより感情移入できる方を最初に読んでもらいたいと僕は思う。
この2冊の他に、交互連載していた時のように章ごとに視点が切り替わる愛蔵版も存在する。こちらは一般的にはあまり知られていない本だ。
2冊に分かれているほうは主人公に感情移入しやすいのが良い点だ。
一方、二人の視点を交互に読む愛蔵版では物語の流れがつかみやすいのが良い点だ。
順正がこんな生活、こんな気持ちでいる時、あおいはどうなのかという比較がしやすい。
脱線したお話
冒頭でも紹介した映画は、内容が少し異なるが単なる小説の映画化、という枠にはとどまらずファンも多い。
僕も小説を読んだあとに映画を観たが、今でも覚えているシーンや建築物がたくさんある。
この映画を観たのがきっかけでミラノやフィレンツェに行った人もいるのではないかと勝手に思っている(少なくとも僕は感化された)
それぐらいイタリアの魅力が詰まっている映画だし、美しいと感じさせられるのだ。
そして美しいのは映像だけではない。
音楽がまた素晴らしいのだ。
「冷静と情熱のあいだ」のCDは、主題歌を歌っているアイルランドの歌手、エンヤの曲だけを集めたものと、それ以外の曲も入ったオリジナルサウンドトラックと二種類ある。
そのオリジナルサウンドトラックの作曲者、吉俣良さんは僕の大好きなドラマ「空から降る一億の星」の劇伴(ドラマの中で流れる音楽)を作曲したお方。
名前を聞いたことない人でもこの人の作った曲を聴いたことがある人はかなり多いはずだ。
ドラマや映画、舞台、アニメ、CMの曲を数多く手がけている。
このサウンドトラックは本当に、本当におすすめする。
音楽というのは、記憶とリンクしやすい。
テレビや動画を観ている時、昔聴いていた曲が流れるとその曲をよく聴いていた頃自分が何をしていたのか、何を想っていたのか、思い出すことが多々ある。
この間は、宇多田ヒカルの「Automatic」を久しぶりに聴いて初恋の人のことを思い出していた。
もう二十ふふふん年くらい前のことだ。
そんなに前のことでも音楽を聴いただけでその時の気持ちがよみがえってくるのだから音楽の力とは偉大なものだなとしみじみ感じた。
話が脱線してしまったが、映画のサントラも同じで、曲を聴くと映画の風景や自分が抱いた感情が自然とよみがえってくるのだ。
しばらく余韻に浸っていたい時にはサントラは絶大な力を発揮する。
(小説や映画の世界に浸りすぎて現実に戻れなくなるのではないかとヒヤヒヤするのは僕だけだろうか)
脱線ついでに僕が一番好きなのはドラマ「砂の器」のサウンドトラックだ。
このサントラ一枚でどれだけ苦しい思いをしたことか
「冷静と情熱のあいだ」はとても切ない気持ちになる恋愛小説だ。
一つの恋愛がもたらすその後の人間の変化や心理が描かれていて、失恋した人にはとくに共感を得る部分も多いと思う。
登場人物の心理描写を重視する人や、難しい文章は苦手な人にもおすすめしたい。
恋愛小説の名作であることは間違いないので是非読んでみてもらいたいと思う。
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